俳句の作り方     春の暮の俳句

     妻亡くて道に出てをり春の暮    森澄雄もりすみお

    つまなくて みちにでており はるのくれ

 

 

     春の暮が春の季語。

    「春の夕べ、夕暮れ時。

    日ごとに日の暮れるのが遅くなり、駘蕩たいとう とした気分が漂う。

    春季の終わりは『暮の春』と言って区別する。

    *駘蕩・・・のびのびしているさま、おだやかなさま、のんびり」

     (俳句歳時記 春 角川書店編)

     妻亡くて道に出てをり春の暮

 

 

     妻亡くて道に出てをり春の暮

 

 

     句意を申し上げます。

    妻を亡くし独りとなった悲しみの中、家にいられずに道に出ている春の夕暮れ時であることよ。

 

 

     鑑賞してみましょう。

    妻の葬式の後、私(作者)は家にじっとしていられませんでした。

    胸の奥に沈んだ喪失感があまりにも大きく、その重さに押しつぶされそうでした。

    気が付けば道に出ていました。

     道に出た私は、歩くこともできずただ茫然と立ち尽くしていました。

    春の暮時の光は柔らかいはずなのに、今の私には少しも暖かくありませんでした。

    悲しみの輪郭は、光に触れても風に吹かれても少しも柔らかくなりませんでした。

    むしろ、その輪郭がはっきりと浮かび上がってくるようで私はその場から動けなかったのです。

     ふと、夕暮れの影が長く伸びていることに気づきました。

    影は光の柔らかさを押し返すように冷たさだけを保っていました。

    そして私の姿を黙って映していました。

    哀しみの輪郭は、冷たい影のせいで少しもあいまいになりませんでした。

     妻亡くて道に出てをり春の暮

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